#074 なぜ投資のプロはサルに負けるのか(藤沢 和希)-第三章②
本日は前回に引き続き、第三章の2回目となる。4~6について解説していきたい
・1. 金利はファイナンスの根源的な概念
・2. 明日のお金よりも今日のお金は価値が高い
・3. 現在価値とディスカウント・レート
・4. DCFモデルで債権の価値を計算する ←本日
・5. マンションの価値を計算する ←本日
・6. 人間の価値を計算する「人的資本の考え方」 ←本日
・7. 人類最大の発明「株式会社」
・8. 株主と債権者
・9. 株式の価値の計算しよう
・10. 価格と価値の違いを見極められれば投資で勝てる
・11. DCFモデルは机上の空論?
■4.DCFモデルで債権の価値を計算する
本章はDCFモデル(Discounted Cash Flowモデル)についての、説明となる
- DCFモデルは投資理論の王様
- あらゆる金融商品や事業の価値を計算できる
とのこと。以下2つの事例を挙げている:
<ゼロクーポン債の場合>
- ゼロクーポンとは、「満期が来たら額面分のお金を返済します」という借用証書
- 買うときは、額面以下の金額で買うことが出来る
- 満期まで1年ある額面100円のゼロクーポン債の現在価値は100円÷(1+r)で計算できる
- 満期までn年ある額面100円のゼロクーポン債の現在価値は100円÷(1+r)^n で計算できる
- 社債の場合は、安全な国債の利回りにいくらか割増されたディスカウント・レートが使われる
- この国債の利回りよりも高い部分を「クレジット・スプレッド」と呼ぶ
- 財務の安定した優良企業(例:トヨタ自動車)ほど、「ゼロ」に近づく
<利付債の場合>
- 利付債はゼロクーポン債と違い、毎年クーポンとして利息が支払われる
- 満期になると額面の100円が返ってくるのは、同じ
- つまり利付債は毎年のクーポンの分だけ、ゼロクーポン債より高くなる
- 毎年C円のクーポンがもらえて、n年後の満期には額面の100円が償還される利付債の場合
- 毎年のクーポンを現在価値に割り引いて足し合わせる
- C÷(1+r)+C÷(1+r)の^2+・・・C÷(1+r)^n
- で現在価値の総和が計算できる
- これに、満期に償還される100円の現在価値
- 100円÷(1+r)^n
- を足す
- 厳密には、1年後と2年後のディスカウント・レートはそれぞれ違う値を使う
- 毎年のクーポンを現在価値に割り引いて足し合わせる
とのこと。このように、ディスカウント・レートとなる金利「r」さえ分かれば、あとは年数の乗数「^n」分かけ合わせて、足してあげれば、現在価値PV(Present Value)が出る、というものだ。
一見複雑に見えるが、実はやっていることはしごく単純だ。
「金利」については、正にそのような説明をしている
- キャッシュフローを金利で割れば債権の値段が決まる
- 分母の金利が上昇すると、債券価格は下落
- 分母の金利が低下すると、債券価格は上昇
- クーポンや満期に返ってくる額は決まっている
- よって、債券の価値は「金利だけ」で決まる
- 債権投資とは「将来の金利を当てるゲーム」である
とのこと。「金利」はとても重要だ。
■5.マンションの価値を計算する
続いて、マンションを商品としてみたときの、先ほどの債権との類似性について説明している:
- マンションは利付債と似た商品
- 投資用も分譲も同じく、将来キャッシュフローの総和を適切なディスカウント・レートで割り引いたもの
- 投資用マンションを1戸買った場合の、大家さんの手元に残る将来のキャッシュフロー
- 毎年のキャッシュフロー=(1ー税率)X(占有率 X 年間家賃 ー コスト)
- ※占有率=入居が年間のうち何日間あったか。入居日数÷365
- マンションを手放すときの売却益(n年後に売却するものをFV(Future Value)とする)
- 以下で表わせる
- インフレ率や金利の水準を考え、ディスカウント・レートや家賃、将来の売却価格を推定して、不動産が鉛筆を舐めて、えいやで不動産価格が決まる
- ただ、このような多数のパラメーターを推定するのは大変なので、実用的などんぶり勘定がある
- 年間の家賃収入を不動産価格で割ったものを利回りと呼ぶ
- 利回りは景気などの経済情勢を反映して、大体の水準が決まっている
- 最近では5%
- これをさかさまにすると
- 不動産価格=年間家賃÷利回り
- となる
- 利回りを5%とすると、年間家賃を20倍すると不動産価格が決まる
- 例)家賃10万円のマンションだと、120万円(年間家賃)の20倍である2,400万円が物件の理論価格
となる、とのこと。
私も不動産投資をしている為、この考え方は概ね理解していたが、公式に「占有率」を入れる、という考え方はなかった。しかしながら、確かに入居者の入れ替えはどこかで発生する(仮に4年に1回であったとしても)、と思われるのでこれを計算式に入れておくのは大事だと勉強なった。
また、利回りは5%とあるが、ボロ戸建ての場合だと20%程度がボーダーラインとして見ている(買い値が数百万円と安いので)。
■6.人間の価値を計算する「人的資本の考え方」
債権、マンションと来て、今度は人間(サラリーマン)のキャッシュフローの計算についての説明となる:
- サラリーマンのキャッシュフロー
- サラリーマンが受け取る手取り(税引き後)の年収から、食事代や衣料費、家賃などのコストを引いたもの
- 税引き年収ーコストで計算できる
- 20代のサラリーマンは後40年働くから、40年間分をディスカウント・キャッシュフローで割り引いて足し合わせる
- 借金があれば総和から引く
- 貯金などの財産があれば、それを足す
- 例)20代サラリーマンの手取りが500万円、コストが年間200万円だと、年間の正味のキャッシュフローは300万円
- ディスカウント・レートを7%くらいと見積もり、あと40年間働くとすると、このサラリーマンの値段は4,000万円くらい
- 例)外資証券マンの手取りが2,500万円、コストが年間500万円だと、年間の正味のキャッシュフローは2,000万円
- しかし、いつ首になっても不思議でない仕事なので、ディスカウント・レートを高くして20%と見積もり、15年間働くとすると、1億円くらい
- 例)お医者さんの正味キャッシュフローを2,500万円-コスト500万円=2,000万円とする
- 安定している職業なので、ディスカウント・キャッシュフローはうんと低めで3%と見積もり、40年間働くとしても4億円以上
- サラリーマンが受け取る手取り(税引き後)の年収から、食事代や衣料費、家賃などのコストを引いたもの
ということらしい。
ここで疑問にあがるのが、ディスカウント・キャッシュフローの利率が「恣意的」に決められていることだ。
確かに銀行が「融資」をする対象の企業や個人の信用であれば、トヨタのように信用が高ければ、利率を低くする、というのは分からないでもないが、サラリーマンの収入に対しては、どちらかと言うと個人が「投資」をする観点での話しであり、その際の利率は、シンプルに長期金利(の予測)でよいのではないか、と感じた。
なぜ、サラリーマンと投資銀行、医者でディスカウント・レートが変わるのかが、現時点では若干理解ができない状況ではある。。後に説明があるのだろうか。。
■まとめ
・DCFモデルで、いくつかの現在価値を計算した
・まず、将来受け取る債権の価値を計算した。これにはゼロ・クーポン債権と、利付債が含まれる
・ゼロ・クーポン債権は、満期額をディスカント・レートで割り戻す事で、現在価値が分かる
・利付債は、加えて、毎年受領するクーポン額をディスカント・レートで割り戻し、足し合わせることで、現在価値が分かる
・次に、購入したマンションの将来キャッシュフローを現在価値に計算する方法を学んだ
・毎年受領するキャッシュフロー(賃料)X 占有率 ー コスト をディスカウント・レートで割り戻せば、現在価値(買い値)が分かる
・簡易版としては、家賃収入 ÷ 利回りが不動産価格の現在額となる
・最後に、サラリーマンの年収の現在価値の算定の仕方を学んだ
・基本は将来年収から年間コストを差し引いた額をディスカント・キャッシュフローの利率で割ることで求められる
・個人的には、職業によってディスカント・キャッシュフローレートが変わる点は理解が出来なかった
以上となります。次回はこの続きについて記載して行きたいと思う。
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