#077 なぜ投資のプロはサルに負けるのか(藤沢 和希)-第四章 投資は運か実力か?- ①
本日は第四章「投資は運か実力か?」その①を解説したい
以下が第四章の内容となる。
1.プロの運用成績は平均するとサル以下 ←本日
2.ノーベル経済学賞受賞者の作った最高のヘッジファンドが、多額の損失を抱えて破綻 ←本日
3.プロ同士の壮絶な競争が繰り広げられるマーケット ←本日
4.効率的市場仮説という宗教
5.効率的市場仮説のパラドクス
6.損した時は運、儲けた時は実力
7.それでもこれからもずっとプロが株価予想を続ける
■1.プロの運用成績は平均するとサル以下
- 投資のプロはどうやって利益を上げているのか、という質問
- 答えは「投資のプロは利益をあげていない」
- 例えばファンド・マネジャー
- ファンド・マネジャーは投資信託を運用する
- 投資信託には国債や社債、株式などがある
- 株式を例
- さまざまな業界をリサーチするアナリストと協力し、今後業績が伸びそうな会社を選び出す
- 市場で割安に放置されている会社を発掘する
- 顧客から預かったお金を運用する
- ファンド・マネジャーが所属する資産運用会社
- 長期の実績や経験から、さまざまな投資の為のノウハウを蓄積している
- このようなプロ集団の成績はどの程度か
- 散々たるもの
- 平均すると、市場インデックスを下回っている
- 市場インデックス
- 日本だとTOPIXや日経平均など、市場全体の株価を表す指数
- 市場インデックスどおりのパフォーマンスを上げるには、インデックスとそっくりに証券を保有するインデックス・ファンドを購入すれば誰でもできる
- プロのファンド・マネジャーはインデックスに対してどれだけ勝つかで、評価される
- ランダムに銘柄を選んで投資した場合、プロのファンド・マネジャーがインデックスに勝つ確率と負ける確率は半々
- プロ集団の運用成績を平均すると、サルがダーツを日経新聞の株式欄に投げて、ランダムに銘柄を選定して投資するよりも悪い
- プロがサルよりお馬鹿ではない
- プロは最悪でもサルと同等
- 但しサルはバナナを与えれば働くが、投資のプロは高い給料を払わないと働かない
- 投資のプロに支払われる給料は、ダイレクトに投資信託のコストとして跳ね返ってくる
- 平均するとこのコストの分だけ、サルよりも運用成績が劣る
- 統計的にまったく意味をなさない投資信託がたくさん作られ、たくさん売られている
- 統計的に効果が実証できない薬は偽薬であり、それらを売りさばく人は詐欺師である
- 投資の世界では、サルよりコストの分だけ負ける商品を作り、売ったりする人も、立派な社会人として目抜き通りの真ん中を歩くことが出来る
とのこと。
なかなか辛辣な言いぶりだが、本書のタイトルである「なぜ投資のプロはサルに負けるのか」の直接的な主題がこの箇所に凝縮されている。
つまり、投資のプロの成績は平均するとさほどではなく、インデックス・ファンドに劣る。つまりサルがダーツをして銘柄を選ぶのと変わらない、と言っており、更に投資のプロは高コストな分、サルにも劣る、と言うのが主旨である。
■2.ノーベル経済学賞受賞者の作った最高のヘッジファンドが、多額の損失を抱えて破綻
- 平均するとサル以下
- しかし、一部の優秀なファンド・マネジャーは非常にいい成績を収める
- 投資雑誌では過去成績がよい人気ファンドがたくさん紹介されている
- しかし、事前に優秀なファンド・マネジャーを選び出すことは至難の業であることが、実証されている
- 理由は、過去の実績から将来の成績は予見できないから
- 極め付きのエピソード
- LTCM(Long Term Capital Management)という伝説のヘッジファンド
- 債権の帝王と呼ばれた伝説トレーダーのジョン・メリウェザー、ノーベル経済学賞受賞者のロバート・マートンとマイロン・ショールズらが、1993年に作ったスーパースターのヘッジファンド
- メリウェザーはウォール街の投資銀行であるソロモンの利益の半分を稼いでいた
- マートンとショールズは、金融工学のオプション理論を作り出した人達
- 運用額は1,300億ドル以上
- デリバティブによるレバレッジを目いっぱいかけた為、アメリカ連邦政府予算に匹敵する額を運用
- 5年もたたないうちに元本がなくなってしまった
- UBS銀行は7億円の損失
- 住友銀行も1億円の損失
- LTCM(Long Term Capital Management)という伝説のヘッジファンド
- テニスの試合なら、マリア・シャラポワが中学生に負けることはない
- 投資の世界では、超一流のプロフェッショナルがアマチュア投資家やサルにさえ負けてしまう
とのこと。
これだけの天才たちをもってしても、失敗することがあるのが投資の世界だということが分かった。
■3.プロ同士の壮絶な競争が繰り広げられるマーケット
- なぜ、ファンド・マネジャーの運用成績がさえないか
- ファイナンス理論の中心的概念である「効率的市場仮説」
- 株価がどのように決まるのか
- 株を高く売りたい人と、安く買いたい人の提示価格が一致したとき、売買が成立し株価が決まる
- 売り手が、こんなボロ株をこんな高く売れてラッキーと思っている
- 買い手が、こんなピカピカの株をこんな値段で買えてラッキーと思っている
- その後価格が上がるか下がる
- その時にどちらかのプロが馬鹿だったかが分かる
- このようにプロ同士が知恵を絞って、壮絶な競争を繰り広げる結果、株価は常に割高とも割安とも言えない、絶妙な範囲のところでいつも決まっている
- 株価がこのように常に「正しい価格」で取引されている状態を、ファイナンス用語で「効率的」という
- 投資のプロの予想が当たらない理由
- 無能だからではない
- むしろその逆
- 投資のプロは名門ビジネス・スクールや一流大学をトップの成績で卒業し、意欲と才能があふれる「ベスト・アンド・ブライテスト」
- 彼らが市場で壮絶な競争を繰り広げる為、市場は限りなく「効率化」していき、結果投資というゲームがコイン投げのように「運」だけが支配するゲームに限りなく近づいていく
とのこと。
なんとも皮肉なことか。投資のプロがしのぎを削って、市場の歪みを見つけ、売買を繰り返すことによって、自然と株価が「正しい価格」に訂正される、というのだ。
次回は続きの4以降を解説して行きたいと思う。
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